普通、車の呼び方と言うとその車につけられた名前で呼びますよね。

そんな呼び名の当たり前を覆して、名前以外で呼ばれる車があります。
「AE86」(エーイーハチロク)と呼ばれる車です、略して86(ハチロク)。
例えば、「いつかはクラウン」というキャッチコピーがあったクラウンは「クラウン」です。ホンダにS2000というツーシーターのスポーツカーがありましたが、あれはS2000という名前でした。
イニシャルDの漫画から若い世代にも一気に広まった「86 ハチロク」という車種。
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そんな86についての解説をしていきます。

さまざまなジャンルのドラマが続々スタートしています。
お勧めできる作品をまとめてみました。
どの作品も選りすぐりの面白いものばかりなので、気になる場合はぜひチェックしてみてくださいね。
まずは、前編として、86が現役として生産されていた時代を中心に見ていきます。
JEEP(ジープ)はやっぱり乗ってみたい。悪路走行時の耐久性
86の意味?どんな車なの?
この車、1983年から1987年までの間に販売されたトヨタの車なのですが、そもそも86、AE86とは車に固有の型式のことなのです。
先ほど書いたように車には当然、その車につけられた名前というものがあります。

でもこの名前、車がモデルチェンジしてもそのままです。
何代目○○とかいった言われ方をすることはありますけど、普通は、何代目であろうが、○○は○○です。
区別することはありませんよね。
でも実際には、それらの車はデザインや大きさあるいはシステムも含めて別モノなのです。
そして、それらを識別・区別するためにそれぞれのモデルにつけられたものが「型式」と呼ばれるもので、車のIDカードとも言っていい車検証を見れば中に記載があります。
ちなみに車検証の中には車名と型式とそれに車体番号というのがあって、それぞれは別のもの。

そのうちの、型式に当たるものがAE86なのです。

そして一見意不明そうな「AE」という単語にもちゃんと意味があって、簡単に言うと「A型エンジンを積んだE型車輛」ということを表しています。
この1代前のモデルは「TE71」と言いますが、これは「T型エンジンを積んだE型車輛」という意味です。
また、同時期にあったスターレットという車の場合は「EP71」と呼ぶのですが、これは「E型エンジンを積んだP型車輛」ということを表します。
少し長くなりましたが、ある意味「肝」でもあるので紹介しました。
ちなみに、名前は「カローラ レビン」「スプリンター トレノ」と言いますが、こちらの方はサラッと流しますね。
86が生まれるまでのストーリー
トヨタには、トヨタの成長を支えた車がありました。

カローラと呼ばれるものと、その兄弟車という存在だったスプリンターです。
今は、そういう言い方をしなくなりましたが、所謂「大衆車」と呼ばれる位置づけの車で、高度経済成長期にみんなが車を持つようになって各家庭にあった車です。
そのスポーツカー的なモデルとして開発されたのが、「カローラ レビン」「スプリンター トレノ」と呼ばれるグレードでちょっと若者向けのイメージを持たせたものでした。
「86」について
86という車は、駆動型式や足回り等基本設計自体は、先代のTE71と変わってはいないのですが、決定的に違ったのはそのエンジンでした。
それまでのTE71に積まれていたのは2TGと呼ばれるもので、こちらもパワフルで非常に評価の高いものだったのですが、86に新たに搭載された4AGと呼ばれれるエンジンはパワーがありながら非常に吹けあがりのいい、そしてアクセルに対するレスポンスに優れたものでした。
また当時、ホンダのF1に代表されるように今よりも人気があり影響力の強かったモータースポーツの世界でも大活躍したため、若者を中心に人気が爆発。
当時の時代背景としてはいわゆるバブルと呼ばれた時代で、若者もこぞっておしゃれな車、高級車を手に入れることを目指していた時代でもあったのです。

免許を取って、いい車に乗れば可愛い女の子とデートができる!!という感じだったんです。
当時、同じような位置づけの車の名前としては、日産シルビア、ホンダプレリュードといったものがあります。デートカーと呼ばれたもので、国産の最上位に位置していたのがトヨタソアラという車でした。

そんな中で、この86もちょっとスポーツカーの雰囲気を持ったデートカーという面も持ち合わせていました。
「お洒落で、イケてる車」だったのです。
ちなみに、レビンとトレノの違いとして1番大きいものは、トレノの方には、今はあまり見られなくなった「リトラクタブルヘッドライト」という普段は格納されていて、ライトの点灯時のみパカッ!と顔を出すものが採用されていました。
86生産終了
大人気となった86ですが、1987年を持って生産終了となります。そして、この86がある意味で不思議な輝きを見せたのは、この後なんです・・・。
【親子車】
AE86の生産終了は1987年
86のデビューは2012年25年の時を超えて登場。#赤の86親子 pic.twitter.com/LfVYjS7Kp3
— H.Amemiya | 2960@3.5 GRガレージ小牧 オリパラ交流会 (@hidetoame) January 18, 2021
AE86生産終了後のモデルについて
AE86の後継となったのはAE92という型式のものでした。

それまでのFRという駆動型式からFFという駆動型式に変ったのです。
FF自体が悪いことではないですしホンダなどは代々FFのスポーツカーも作ってきました。
しかし、トヨタの86から92への変化は、86の代名詞ともなりつつあった「ドリフト走行」というものを捨て去ってしまったもので、おとなしいエレガントなイメージへの転換ともなりました。

その後、1991年からの6代目AE101、1995年からのAE111という風にエレガント系へのモデルチェンジを重ね、レビン・トレノは幕を閉じたのでした…。
時代の背景がスポーツカーからミニバンやSUVといった分野に変化していったので止むをえなかった部分はあるのでしょうが、FRスポーツと言うコンセプトを捨てた時点で86に代表されるレビン・トレノは終わってしまったのかな と思っています。
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生産終了となった86の人気の秘密
この86が不思議な人気を持ちだしたのが、この生産終了後のことでした。

多くの人が86に乗り続け、あるいは86を探し、コレクションのように2台目持ちする人まで。
大型化しつつある車の流れの中で、全長4ⅿちょっと・全幅1.6mちょっと というサイズは実は日本にはちょうどいい大きさとも言えます。
そしてドリフト・走り屋といったイメージは86という車に付加価値を付けたました。
また、シンプルな構造や、その人気もあいまってアフターパーツが豊富で安価なことも愛好家を産んだもととなったような気がします。
自分だけの86をみんなが目指したのでした。

そんな背景の中で登場した「イニシャルD」という漫画が大人気!
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86の人気に裏打ちされ、また86人気に拍車をかけました。
そこで、登場する白と黒のコンビのトレノは「パンダトレノ」と呼ばれ、なかにはサイドに「藤原豆腐店」と書かれた「イニシャルD使用」のものまで。
現役の車の中ではこんな車がないというのが86人気に一役買っている気がします。
ちょっととがっていて自己主張ができる、それでいて実用性も犠牲にしていない、そんな車を求めている人達が確実にいるということですね。
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果たして復活した86は「86」か?
2012年にトヨタから86という名前の車が発売されました。
この車は86と呼ぶしか仕方がないのですが、実はAE86とは似て非なるものとなってしまいました。
スバルの水平対向のエンジンを積んでいて(FRという駆動型式)

ターゲットは、ずばり昔AE86を乗っていた、あるいは乗りたくても乗れなかったオジサマ世代を対象とした車のような気がします。
スポーティーな形でおしゃれな車なんですけど、なんだか違うんです…。

86じゃないんです…。
昔を知っている者としては、むしろミニソアラっぽいなと。
ボディーも大きく重くなり、決してドリフトといったようなことはしない!優雅に走る車になってしまいました。
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86と現在のスポーツカーとの決定的な違いは?
86のスポーツカーとしての魅力について見てきましたが、現在でもスポーツカーと呼ばれる車はあります。
それも86と比べても遥かに高性能なものばかりです。

例えば、高出力のエンジンを積んだ4WDといったものがありますね。
勿論、素晴らしい車なんですが、別枠で違うのです。
その決定的な違いというのは、乗り手の感性に訴えてくるか!かどうかということのような気がします。
感性といのは非常に曖昧な言葉でもあるんですけど、自分がそのマシンに全てをゆだねられている、自分で操っている、そして操らなければいけないといった感覚に結び付くもの のような気がするんです。
現代のスポーツカー自体は勿論素晴らしい性能だと思うんですが、なんだか人が乗せられている感があるような気がしてつまらないのです(バイクもしかり)。
自分の握っているハンドル、自分で踏んでいるアクセルやブレーキによって限界付近で踏みとどまっているという感じがないような感覚に。
表現すると、乗り手に危機感を抱かせないようになったのが 今の車のような気がします。
アクセルを踏んでしまえばスピードが出て、そして高度なシステムで安定させてくれている、そんな中ではやはり車を運転しながらの危機感、大げさに言ってしまえば刹那のようなものを感じることはできなくなったのでは・・・ と思っています。

それが、衰えない86は不動の人気となり、また86の後継を作ることができないことにも繋がっているのだと思います。

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まとめ
86という車について見てきました。
86は、多分その時点では意図的ではなかったと思うのですが、微妙なバランスの上に成り立つ奇跡の1台といっていいと思っています。
例えば、86の代名詞ドリフトにしても、車の足回りの性能がアップすればグリップ力が強くなりドリフトはしにくくなります。早く走るのにそんなテクニックも無駄になります。
86の基本設計の古さと新しくなったエンジンのミスマッチが産んだのが86のドリフトに繋がったとも言えるような気がします。
スタイリングやサイズ、その他諸々86の全てが絶妙な部分をついてしまった(敢えて「ついた」ではなく「ついてしまった」)結果が、名車中の名車を産んだんだと思います(個人的には。)
だから、86はレビンやトレノではなく86なのです。
ご訪問ありがとうございました。